新しい人 広い場所へ。国際舞台芸術祭「フェスティバル/トーキョー17」全プログラム発表記者会見レポート

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国内外から時代を切り取る先鋭的なプログラムを集める国際舞台芸術祭として、世間の耳目を集め続けてきた「フェスティバルトーキョー(F/T)」。2009年2月に誕生したこのプロジェクトは、これまでに264以上の作品を上演し、56万人を超える観客を動員しました。第10回目という節目を迎えるF/T17では、アジアの舞台芸術を牽引する若い世代のアーティストを招聘し、日本との共同製作のもと国内外の様々なアーティストの作品を紹介します。

7月18日に「フェスティバルトーキョー2017」全プログラム発表の記者会見が行われましたので、その様子をお伝えいたします。

 

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「境界線を超えて、新しい人へ」をコンセプトに掲げ、東京芸術祭に合流することによってより多彩なプログラムを提示した昨年のフェスティバルトーキョー。本年も、豊島区が目指す「まち全体が舞台の、誰もが主役になれる劇場都市」を体現するプログラムを、更に盛大に展開していきます。

第10回目となる「フェスティバルトーキョー2017」のテーマは、「新しい人 広い場所へ」。

 

F/T ディレクター 市村作知雄さん

F/T ディレクター 市村作知雄さん

昨年に引き続き、F/Tのコンセプトと全体像を説明してくださったのはディレクターの市村作知雄さん。今年はプログラムの組み方を変え、ヨーロッパの演劇をメインプログラムに据えるのではなく、全てアジアの芸術でプログラムが構成されています。

「世界で最も新しいものは今、アジアから生まれているのではないでしょうか。そのぐらい先端的なものが出始めています。(ヨーロッパと比べても)全く遜色がない」

新たな方向性を打ち出したF/T17に大きな期待感を滲ませ、市村さんはそう語ります。
今回のF/T17では、国内外から集結した同時代の優れた作品を主催プログラムとして14演目を実施。各作品に関連したトークや展示を展開、さらに連携プログラムとして12演目が上演されます。


それでは、発表されたプログラムの一部の内容についてご紹介いたします。

 

『わたしが悲しくないのはあなたが遠いから』
作・演出:柴 幸男
10月7日(土)~10月15日(日)
東京芸術劇場 シアターイースト / シアターウエスト
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2010年『わが星』で第54回岸田國士戯曲賞を受賞した気鋭の劇作家、柴幸男が「距離」をテーマに創作した新作が上演されます。同じフロアでつながった隣同士の2劇場を使い、同時刻に異なるバージョンで上演するというユニークな試みで、「遠く離れていたとしても、他者と遠いまま出会う方法はないのか」という問いを投げかけます。

F/Tと台北パフォーミングアーツセンターとの共同製作で、楽曲を台湾の音楽家、衣装も台北のフッションブランドが手がけます。2018年には台北演劇祭で上演予定。

 

■マレビトの会『福島を上演する』
作・演出:マレビトの会
10月7日(土)~10月15日(日)
シアターグリーンBASE THEATER

© Keiko Sasaoka

© Keiko Sasaoka

既存の上演形式にとどまらない様々な演劇表現の可能性を追求する「マレビトの会」が、F/Tと始動させた長期プロジェクト『福島を上演する』。複数の作家が福島市で取材して執筆した複数の戯曲をシンプルな空間で上演し、演劇による「福島」の時間を表現するという試みです。

2年目となる本年は取材の範囲を福島県全域に広げ、上演回数も4日間4ステージから7日間12ステージに拡大。より多くの出来事を積み上げることで、福島の風景をより重厚に立ち上げることを目指します。

 

■『パレスチナ、イヤーゼロ』
作・演出:イナト・ヴァイツマン
10月27日(金)~10月29日(日)
あうるすぽっと

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市村ディレクターがその重要性から「緊張に招聘することになった」と語る話題作。イスラエル・ユダヤ人演出家のイナト・ヴァイツマンがパレスチナ・アラブ人の俳優を起用し、パレスチナ問題を辛辣なユーモアを交えて描き出します。

一度はイスラエル国家を批判する内容があるとして検閲対象になりましたが、昨年イスラエル国内最大のアッコ演劇祭で無事に初演を迎え、パレスチナ人俳優ジョージ・イブラヒムがベスト・パフォーマー賞を受賞するなど、大きな話題を呼びました。永遠の闘争のうちにあったイスラエル人とパレスチナ人が手を取り合い、作り上げた本作。個人的には最も注目しています。

 

まちなかパフォーマンスシリーズ 
■快快『GORILLA ~人間とは何か~ 』
演出: 北川陽子
11月12日(日)
池袋西口公園

Photo: Kazuya Kato

Photo: Kazuya Kato

演劇という枠にとらわれず、常に既存の境界を崩すパフォーマンスに挑む劇団、快快。近年では東京都内のスウィートルームで上演され、その場所でしか生まれえない物語を構築した『CATFISH』が話題となりました。

今回はF/T09秋に登場したGORILLAが再登場し、ミュージシャンとのコラボレーションをおこないます。俳優がGORILLAを演じること生まれる違和感や親和性が、「人間とは何か」と観客に問いかけます。

 

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記者発表会では通訳の北川陽子さん(快快)を介し、GORILLAとの質疑応答がありました。

 

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-今回の作品では40分踊り続けるということですが、大丈夫なんでしょうか?

GORILLA ウッホ・・・ウッ、ホ。ホホホッホ。(私は、私の体力の限界まで、誰に縛られることなく踊ります)

 

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-人間とは何でしょうか。

GORILLA ウッ・・・ホ。(人間とは・・・演じる生き物です)

 

身振り手振りを交え、じつに感情豊かに話してくれました。「感情豊か」と思うということは、GORILLAの中に人間との近似性を見出しているということですよね。当日のパフォーマンスがどのようなものになるのか、大変興味深いです。


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「人間のサイズは変わらない。でも現代は情報の速度が上がって、偽りの距離感が縮まってくる。それに対して、どう思えばいいのだろう」

東日本大震災をきっかけに、そうした思いを抱くようになったという柴幸男さんの言葉が印象的でした。
世界がどんなに悲惨な出来事に満ちていても、私たちは今、ここにいることしかできない。一つの作品を選んで足を運び、鑑賞するという行為は、そんな生身の自分と向き合うことなのかもしれません。

 

国境、世代、ジャンルを越えて多様な価値観が出会う場所、「フェスティバルトーキョー2017」。
「ここにいてよかった」、あなたがそう思えるような現実とF/T17で出会えることを願っています。

 

【開催概要】

名 称 フェスティバル/トーキョー17
会 期 平成29(2017)年9月30日(土)~ 11月12日(日)
会 場 東京芸術劇場
あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
南池袋公園
PARADICE AIR ほか
プログラム数 主催プログラム14演目・連携プログラム12演目
主 催 フェスティバル/トーキョー実行委員会
豊島区/公共財団法人としま未来文化財団/NPO法人アートネットワーク・ジャパン、アーツカウンシル東京・東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
オープニングプログラム共催 国際交流基金アジアセンター
協 賛 アサヒグループホールディングス株式会社、株式会社資生堂
後 援 外務省、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会、J-WAVE 81.3 FM
特別協力 西武池袋本店、東武百貨店池袋店、東武鉄道株式会社、株式会社サンシャインシティ、チャコット株式会社、株式会社ヒューマックスシネマ
協 力 東京商工会議所豊島支部、豊島区商店街連合会、豊島区町会連合会、一般社団法人豊島区観光協会、一般社団法人豊島産業協会、公益社団法人豊島法人会、池袋西口商店街連合会、特定非営利活動法人ゼファー池袋まちづくり、池袋西口公園活用協議会、南池袋公園をよくする会、ホテルメトロポリタン、ホテル グランドシティ、池袋ホテル会
宣伝協力 株式会社ポスターハリス・カンパニー、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館、アップリンク
特設
WEBサイト
http://www.festival-tokyo.jp/

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