”朴直な野性”に触れる小林邦二作品展、東京芸術劇場で6月に開催

油彩「姫子沢」 1941 年(昭和16 年)5P
油彩「姫子沢」 1941 年(昭和16 年)5P

 
長野県東御市文化会館と東京芸術劇場の二つの会場で、「生誕100周年記念 小林邦二作品展 ひたむきに画道へ ~朴直な野性~」が開催されます。
 
戦地で知り合い生涯を通じ交遊した芥川賞作家で読売文学賞、菊池寛賞受賞者の八木義德による作品評を紹介しつつ、油彩・デッサン・資料等、総点数約50点により、18歳から93歳まで75年におよぶ画業が紹介されます。

 

・作家紹介

 

上田市のアトリエにて

上田市のアトリエにて

小林邦二(こばやし くにじ、1916~2010)
長野県東御市田中に生まれ、倉田白洋に絵の手ほどきを受ける。16歳で画家を志し、上京。太平洋美術学校を卒業後、帝展審査員 阿以田治修に師事。兄弟子に松本竣介がいた。二部会展(旧帝展)、春陽会展などに入選、創元会展で『二重像』・『風景』が創元賞を受賞、一躍画壇にデビューしたが、召集された。中国戦線に送られ転戦。戦地で『日本百名山』で知られる作家の深田久弥や八木義德を知り、以後交遊が続く。特に八木義德は生涯を通じて友人となった。
 
戦後、自由美術家協会会員、主体美術協会創立会員となり、東京都板橋区に住み、寺田政明や井上長三郎、古沢岩美らが画友であった。タケミヤ画廊や日動画廊、紀伊國屋画廊(新宿)などで個展を開き、白濤会展(銀座松坂屋)で相原求一朗らと、三月会展(日動画廊)や太陽展(日動画廊)で創元会以来の画友 牛島憲之らとグループ展を行った。
 
出身地の東御市文化会館では、東部町(現 東御市身)発足40周年記念展、文化会館開館10 周年記念展として小林邦二作品展を開き、今回の展覧会で東御市文化会館は5回目、7年ぶりとなる。平成14年と平成21年の二度にわたり東御市の文化発展に寄与した功績により紺綬褒章を受賞している。

 

・作品紹介

 

油彩 「二重像」 1942 年(昭和17 年) 40F

油彩 「二重像」 1942 年(昭和17 年) 40F

きみの繪―これは驚きであつた。きみはもう、こんないゝ繪を描いてゐたのだ。これはいゝ繪だ。(この言葉をぼくはなんとも云へぬいゝ気持で書く)画材としてはもつとも難しいであらうと思はれる男の裸身を選んで美事に「繪」にしてくれた。
 
しかもぼくの驚くのは、この裸身の男の二重像からは「肉感の美しさ」といふものよりむしろ「精神美」といつたものをいきなり感ずることなのだ。この感じは一体どこから来たものだらうか。人物のポーズが佛像のそれに近似してゐるところから来たぼくの「錯覚」なのだろうか。(殊に横向きになった男の顔など、ほとんど佛像のプロフィルだ)
 
そして前面の男の両手の表情―この手の美しさ、ほとんど完全と言ひたいほどだ。―これがまたぼくに蓮のうてなの上に坐した佛像のそれを聯想させる。(もう一度、この手は実に美しい。完全な成功だ)
 
これはほんとうにいゝ繪だ。凝っと見てゐてすこしも飽きない、どころか不思議にひとを引っ張りこむ力を持ってゐる。
 
1946年(昭和21年)6月11日 八木義徳

 

油彩 「いこい」 1959 年(昭和34 年) 80F

油彩 「いこい」 1959 年(昭和34 年) 80F

邦さんの作「いこい」はやはり邦さんらしい仕事だと思いました。けれども率直に申してタブロウ全体がなにかすこし稀薄な感じがしました。邦さん独自のエネルギーが画の中へ集注していない感じなのです。
 
なんとなくそこにスキマを感ずるのです。これはたぶん邦さんがいま絵に対してなにか迷いを感じておられるところではないかとぼくは思いました。
 
いつか邦さんの信州のお家でみせて頂いたあの「肖像」※の強く重く烈しいネリコミをもう一度復活してほしいと思います。むろんこれは素人としてのぼくの勝手な感想です。妄言多謝し、どうか新しいエネルギーの再生を!
 
昭和34年10月27日 八木義徳
  ※「二重像」を指す。

 

油彩「群牛A」 1961 年(昭和36 年) 40F

油彩「群牛A」 1961 年(昭和36 年) 40F

久しぶりに邦さんのお作を拝見してきました。
 
大きな画面にまけない十分の力作とは思いましたが、率直に申して、まだ幾分のためらいと不消化が感ぜられました。
 
邦さんのもつエネルギーがまだ全的にタブローの中にネリこんでいないように思いました。抽象ということに対して、邦さんはいま考えこんでいる最中のように思います。これがふっきれゝば邦さんらしい大胆さと厚みのある迫力が出てくるものと、ぼくはこの次の作品を期待します。
 
ぼく自身もいま考えこんでいるところで、筆がちっとも伸びません。何度やりかけても途中でイヤになってやめてしまいます。だから邦さんのお仕事ぼくにはひとごとではありません。おたがいにいまくるしい峠にさしかかったと
ころなんでしょう。おたがいにもっと自由に大胆に突っこんで行きたいものですね。
 
同年10月25日 八木義德

 
油彩「日暮坂」

きょう18 日望月画廊へ行ってお作を拝見してきました。
 
「日暮坂」というお作、実に大胆な構図で、重く、強く、しかも冴えた鋭い感じを受けました。
 
立派なお作を見惚れました。久しぶりでお目にかかれるのを愉しみにしていましたがお顔が見えず残念でした。
 
また次のお仕事を期待しています。
 
同年3月 八木義德

 

個展会場に訪れた八木義徳さん(左)と小林邦二さん 1992年

個展会場に訪れた八木義徳さん(左)と小林邦二さん 1992年

 

・開催概要

 

展覧会名 生誕100 周年記念 小林邦二作品展 ひたむきに画道へ~朴直な野性~

会場 会場 東京芸術劇場 ギャラリー2(5階)
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-8-1

開館時間 10:00~18:00(入館は17:30まで)
但し、初日6月25日は13:00より 最終日7月1日は16:00まで

URL http://kobayashikuniji.com

観覧料 無料

 
長野県東御市文化会館 サンテラスホールでの開催については、公式サイトをご覧ください。

http://kobayashikuniji.com/schedule.html


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