豊島区は、文学散歩を愛した郷土史家、故伊藤榮洪氏(1932~2016)による豊島区長崎地区とその周辺の歴史・文学を紹介した“ぶらりシリーズ”の第三弾を刊行しました。
『ぶらり雑司が谷 文学散歩』『ぶらり中山道巣鴨 歴史・文学散歩』に続く、豊島区内の歴史・文学スポットをめぐり歩くガイドブックの3巻目でシリーズの最終刊となります。
■豊島区の郷土史を形に
長崎地区は、区が形成される以前に長崎村(町)と言われていた豊島区の西側、現在の山手通り辺りから西側に位置します。本書は、この地域を「椎名町駅」「池袋駅西口」「東長崎駅」それぞれの駅からたどれるように構成されており、豊島区の郷土史を形あるものとして残したいという伊藤氏の想いがつまった1冊となっています。
長崎といえば、区を代表する民俗芸能「長崎神社獅子舞」。村の総鎮守長崎神社を振り出しに、地名の由来などを紹介しています。児童文学・教育の分野では、今年7月に創刊100年を迎える鈴木三重吉主幹の童話童謡雑誌『赤い鳥』の発祥地、坪田譲二の「びわの実学校」、自由学園明日館もこの地域です。
■トキワ荘のある椎名町
またこの地域には、2020年春にむけ復元を進めている“マンガの聖地”トキワ荘のある街として知られる椎名町もあります。トキワ荘には、手塚治虫を慕い、藤子・不二雄(藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二夫)石ノ森章太郎ら多くの若手マンガ家が集まりました。赤塚不二夫が移り住んだ紫雲荘では今も“マンガ家の卵“を支援しています。そのほか区に縁のある文化人も紹介しています。(手塚の塚は旧字)
■人気講師だった伊藤さん
伊藤さんは豊島区生まれ。区立中学、都立・私立高校教論を経て、豊島区史編纂委員、豊島区図書館専門研究員、豊島区参与(非常勤)を歴任。豊島区立中央図書館で地域研究ゼミナール、昭和40年代から続いた古典文学読書会、現代文学読書会等を講義しました。それらの受講生や教え子には“伊藤先生の追っかけ”を自称する人もいる人気講師でした。
“掃苔”ブームの先駆けとも言え、シリーズ最初の『ぶらり雑司が谷 文学散歩』(H22.3発行)は、伊藤さん自ら文学散歩を楽しむ人々を案内していました。他にも豊島区に関連のある著書を多数発行しています。
発行にあたり区の担当者は「伊藤先生の語り口がそのまま残る1冊となりました。地域の方々が守ってきた歴史や文化資産を多くの方に知っていただきたい」と語っています。散歩に便利なように、ポケットに入る小型サイズなこの一冊を片手に、長崎地区散歩を楽しんでみてはいかがでしょうか。
・書籍概要
名称 | ぶらり長崎―歴史・文学散歩 |
著者 | 伊藤榮洪 |
発行 | 豊島区 |
挿絵 | 原一展 |
価格 | 500円 |
問合せ | 中央図書館企画調整グループ 電話:03-3983-7861 |