東京の多彩で奥深い芸術文化を通して世界とつながることを目指した都市型総合芸術祭、「東京芸術祭」。
世界中から東京に人が集まる東京2020オリンピック・パラリンピックを見据え、東京の魅力を満喫できる芸術祭として2016年にスタートしました。
「東京芸術祭2018」は宮城聰総合ディレクターと参加事業のディレクターが協働する「プランニングチーム」が、さまざまな舞台芸術を豊島区池袋エリアにて展開。新たな価値観をはぐくむ交流と参加が生まれることを目指します。
新たな体制で挑む今年の芸術祭のキーワードは、「開く」「極める」そして「つながる」-。
| 演劇という「祝祭」が、「壁」を打ち壊す
記者発表会では、東京芸術祭 総合ディレクターの宮城聰氏から「東京芸術祭2018」のコンセプトについて解説がありました。
この「東京芸術祭2018」を通じ、規模を拡大する「社長」としての役割、後から続く若者たちにバトンを渡すという「世代的」な役割、そして演出家として活躍する自身の「表現者」としての役割という、3つのミッションを自らに課していると語る宮城氏。氏は1990年に劇団ク・ナウカを旗揚げして以来、独自の表現様式を追求してきたアーティストであり、その口調は穏やかながら、表現者としての強い矜持を感じさせます。
「今、東京の演劇界は多様性を失いつつある。俳優がコモディティ(商品)化しているんじゃないか。演技というものに対する考え方がひとつに収束されてしまっているように見える」
宮城氏はそう聴衆に訴え、同時に観劇する層が固定化していること、脚光を浴びる俳優がひと握りであることなどを挙げ、東京の演劇界に対して警鐘を鳴らします。
「僕はこの現状に一石を投じたいと思っています。この『分断』、あるいは『固定化』に対して、何らかの回路を作って敷居を壊したい。ここに流通を起こすためのキーワードが『開く』です」
「開く」「極める」「つながる」をキーワードとして展開される今回のプログラム。宮城氏からはこのうち「開く」というコンセプトをわかりやすく表現したという『野外劇 三文オペラ』の紹介がありました。俳優ひとりひとりとフルフラットにオーディションを行い、囲いを排した公園という野外環境で上演される本プログラム。氏はこれを「お祭りのようなもの」と評します。
この『野外劇 三文オペラ』の上演日程は10月18日(木)〜28日(日)※予定。場所は池袋西口公園で、料金はなんとワンコイン。さらに遠巻きに観ているぶんには無料(!)とのことです。ぜひ、お祭り気分でブレヒトの不朽の名作『三文オペラ』に「参加」してみてはいかがでしょうか?
| ラインアップ紹介
それでは、「東京芸術祭2018」のラインアップの一部をご紹介します。
ガラスの動物園
作:テネシー・ウィリアムズ
演出・舞台美術:ダニエル・ジャンヌトー
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
日程:10月27日(土)〜28日(日)※予定
宮城総合ディレクターが選出した直轄事業は『野外劇 三文オペラ』を含む計6作品。『ガラスの動物園』はなつかしい家族の物語をはかない美しさの舞台美術で表現した作品で、「ここ数年のフランスの演劇界では最大のヒット作」とディレクターの横山義志氏が語る注目作。もともとは宮城氏が静岡県の中高生たちに見せるために制作したものでしたが、それをダニエル氏がフランスで上演したところ、大変高い評価を得たそうです。
ダーク・サーカス
原作:ペフ
出演:ステレオプティック
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
日程:10月27日(土)〜29日(月)※予定
こちらも東京芸術祭 直轄事業の上演作品で、世界中で上演される人気作。あぶないサーカス団がブラックユーモアたっぷりに描かれる、ファミリー向け「超ローテク」ライブアートパフォーマンスです。一人が絵を描き、一人が音楽を奏でるというスタイルで上演されるという本作、影絵を駆使して観客を次第に「ブラックな」世界へと引き込んでいきます。
バック・トゥ・バック・シアター 『スモール・メタル・オブジェクツ』
演出:ブルース・グラッドウイン
会場:池袋西口公園
日程:10月19日(金)〜30日(火)※予定
本作は『野外劇 三文オペラ』と同じく、池袋西口公園で上演されます。知的障害を持つ6人の俳優を中心にしたオーストラリアの劇団による意欲作で、観客はヘッドホンを付け、雑踏のどこかで演じられているドラマを体験します。
「普通は考えられないような表現で、正常と異常、健常者と障害者という線引きには意味があるのかと考えさせられる」とディレクターの内藤美奈子氏が語る本作、まさに宮城氏の語っていた本芸術祭のコンセプトに通じるものがあるのではないでしょうか。
APAF2018 国際共同クリエーション『Beautiful Trauma』
演出:ユスティアンシャ・ルスマナ
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
日程:11月10日(土)〜11日(日)【入場無料・要申込】
APAF(アジア舞台芸術人材育成部門)は2002年に開始されたアジア舞台芸術祭を前身とする人材育成プログラムで、昨年から東京芸術祭の一部門となりました。『Beautiful Trauma』は前年の国際共同ワークショップで制作された小作品の中から選出された小品をフルサイズの作品に発展させたもの。インドネシアの演出家ユスティアンシャ・ルスマナとともにインドネシア・日本・タイ・フィリピンの混合チームで上演されます。
記者会見で印象的だったのは、宮城氏の「モノサシを増やす」という言葉です。
「スポーツというのは敢えてモノサシをひとつにして競い合うものです。でも、文化・芸術というのは『モノサシ』をどんどん増やしていくのです。こんな『速さ』もあるよ、こんな『高さ』もあるじゃないかと。このふたつ(スポーツと芸術)が線対称になることで、オリンピックが本当の意味での『平和の祭典』に近づくことができるんじゃないでしょうか」
グローバリズムに席巻される現代。でも、その「自由」の名のもとに、実は多くの人たちが息苦しさを覚えているのではないでしょうか。でも、そんな自分の肩にそっと手を置いて「そのままでいいよ」「こんな世界もあるよ」と言ってくれる存在。それが本当の芸術なのかもしれませんね。
新たな「東京」を発見し、「世界」とつながる芸術祭「東京芸術祭2018」。あなただけのお気に入りの作品に出会えることを願っています。
| 開催概要
名 称 | 東京芸術祭2018(英称:Tokyo Festival 2018) |
---|---|
会 期 | 平成30(2018)年9月1日(土)~ 12月9日(日) |
会 場 | 東京芸術劇場 あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター) 池袋西口公園 南池袋公園 ほか |
プログラム数 | 30プログラム※予定 |
参加事業 | 東京芸術祭 直轄事業、フェスティバル/トーキョー18、芸劇オータムコレクション、 としま国際アート・カルチャー都市発信プログラム、APAF-アジア舞台芸術人材育成部門 |
主 催 | 東京芸術祭組織委員会【アーツカウンシル東京・東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)、豊島区、公益財団法人としま未来文化財団、フェスティバル/トーキョー実行委員会】 |
助 成 | 平成30年度 文化庁 国際文化芸術発信拠点形成事業(豊島区国際アート・カルチャー都市推進事業) |