「からだの速度で」「フェスティバル/トーキョー19」全プログラム発表記者会見レポート

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2009年2月の初開催以来、計305作品を上演し、合わせて69万人を超える観客を動員した国際舞台芸術祭「フェスティバルトーキョー(F/T)」

同時代の舞台作品の魅力を多角的に紹介し、舞台芸術の新たな可能性を追求するF/Tは、今年で開催12回目を迎えます。

期間は2019年10月5日(土)から11月10日(日)までの37日間。
F/Tでしか出会えない国際共同プログラム、アジアのアーティストの新しい波に注目した作品など、本年も多彩で先鋭的なプログラムの数々が展開されます。

先日、としまセンタースクエアにて「フェスティバルトーキョー2019」全プログラム発表の記者会見が行われましたので、今回はその模様をお伝えいたします。

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フェスティバルトーキョー2019テーマ~「からだの速度で」~

 
12回目の開催となるF/Tのテーマは、「からだの速度で」
今回のテーマはどのようなものなのでしょうか?

F/T ディレクター 長島 確氏のお話です。

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F/T ディレクター 長島 確氏

 

東京という巨大都市では、人以外に、人ではないものの速度、体のないものの速度まで絡まって、様々な速度のバリエーションとグラデーションが共存しています。
私たちは、これまで速さに対する欲求を追い求めてきました。
速さを追求することにより、効率化が進み、生活が便利になったのは間違いありません。

しかし、その一方で、人間の体は本来のスピードに合わせることができずに、悲鳴を上げているのも事実です。

人間の体は、早い時もあれば、遅い時もあります。
元気な時の体、疲れた時の体、幼い体や老いた体、それぞれのスピードがあります。
その時々のスピードに合わせて、生活する必要があります。

パフォーミングアーツ(舞台技術)は、からだを基準にして何かを考え、捉え、生み出していく芸術です。
ひとつの体だけではなく、複数の人の体のそれぞれの関係性を含めて、何かを作り、その作るプロセスの中で、小さな社会を育み、そこで起きるコミュニケーションやセッションを通して、現実の中では、実現できないことを創造することができるのが魅力です。

このフェスティバルトーキョーが、都市を想像してみる、或いは、今はないかもしれない都市を創造する機会になればいいと思っています。

 

プログラムの一部を紹介

 

■「移動祝祭商店街」

パフォーマンスデザイン:セノ派(舞台美術家コレクティブ)  アートプロジェクト/パフォーマンス
10/5(Sat)~10/6(Sun)
トランバル大塚、豊島区内商店街(池袋本町エリア、大塚エリア、南長崎エリア)

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セノ派(舞台美術家コレクティブ)

小劇場をベースに活躍する舞台芸術家たちで結成された「セノ派」。

今回のプロジェクトは、舞台美術家や振付家のチームが商店街を訪れ、地域の人たちとの交流を通し、山車(だし)という形の移動商店街を作り、移動するというものです。
商店街での交流を通して、その商店街の過去や現在や未来の姿を詰め込んで命を吹き込んだ山車は、各会場の練り歩きだけに留まらず、更に移動して、大塚駅前広場とトランバル大塚に集結し、各商店街の人達や見物に来た人たちを巻き込みながら、パフォーマンスを行う予定です。
舞台芸術と地域をどのように繋ぐことができるか?がこのプロジェクトのテーマとなります。

 

■『オールウエイズ・カミングホーム(仮)』

演出:マグダ・シュペフト テキスト&ドラマトゥルク:ウカッシュ・ヴォイティスコ ドラマトゥルク:滝口 健  /演劇
11/8(Fri)~11/10(SUN)
東京芸術劇場シアターイースト

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『オールウェイズ・カミングホーム』

F/ T 15「ポーランド演劇の現在形」にも登壇した、ポーランド若手演出家マグダ・シュペフトの舞台です。
日本・ポーランド両国のスタッフ、キャストと共に、アーシュラ・K ・ル=グウィンの小説『オールウエイズ・カミングホーム」の手法、アイデアを参照して、環境の変動やテクノロジーの進化の先に見える未来のあるべきユートピア像を模索します。

演出家マグダ・シュペフトさんは、「自然、他人との関係、その未来について考えることがテーマのこの作品を通して、主人公の隣にいるような気分で、物語の中で経験する出来事を皆さんが共有することができる舞台になればいいと思います。」と話されていました。

 

■『TOツーツーツー ツー
企画・出演:オクイ・ララ×滝 朝子  /レクチャー・パフォーマンス
11/2(Sat)~11/4(Mon) 15:00~
シアターグリーン BIG TREE THEATER

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TOツーツーツー ツー

2018年からのフェスティバル/トーキョーは、「人と都市から始まる舞台芸術祭」と称し、様々な場(=プログラム)を東京の街中に組み込んでいます。
その中の新シリーズ、「トランスフィールド from アジア」。
これからのアジアの文化を築く原動力となる場所を観客の皆さんと目指す試みとなります。

この新シリーズから取り上げる舞台は、『TOツーツーツー ツー』です。
マレーシア出身で、移民や移動などのアイデンティティをめぐる出来事に着目した創作、対話を繰り返し続けてきた、オクイ・ララと多文化コミュニティにおける作品発表から人と表現の変化を模索する滝朝子。
この2人が、「移民大国」と言われる日本の移民コミュニティの人々が、故郷と日本間で「モノ」のやり取りをすることにより、「適応」や「境界」について考えを巡らせるレクチャー・パフォーマンスです。

 

■ドキュメント 『Changes』シーズン2  /映画
ディレクション:ドキュントメント
11/2(Sat)~11/4(Mon)
池袋HUMAXシネマズ

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『Changes』シーズン2

「劇団範宙遊泳の主催者、山本卓卓が元所属女優・田中美希恵のダイエットを追う」として、2018年に制作、公開されたF/T初の映画作品『Changes』のシーズン2として公開される本作品。
フィクションとノンフィクションの境から俳優、演劇、人間についてを問う作品です。
山本監督は、「現代の社会の厳しさや冷たさには、ほとほとうんざりしています。もっと人々が社会のやさしさに触れられるような作品にしたい」と話されていました。


まとめ

 
今回で12回目の開催となるF/T。
それぞれのアーティストが作る作品を見たり、聞いたり、参加することによって、ご自身の”からだの速度”を確かめられるプログラムとなっています。
F/Tを通して、人間が本来身につけている体の感覚や様々な人々と共存していく力も思い出すことができるのではないでしょうか?

開催まで約2カ月。
私たちの目の前にどのような形でアーティストたちの作品が現れるのか?
今から楽しみです。

 

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最後は登壇者によるフォトセッションがありました。

 

 

開催概要

名 称 フェスティバル/トーキョー19
会 期 令和元年(2019年)10月5日(土)~ 11月10日(日)
会 場 東京芸術劇場
あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
シアターグリーン
トランパル大塚
豊島区内商店街 ほか
プログラム数 主催プログラム15プログラム・連携9プログラム
主 催 フェスティバル/トーキョー実行委員会
豊島区/公益財団法人としま未来文化財団/NPO法人アートネットワーク・ジャパン、
東京芸術祭実行委員会〔豊島区、公益財団法人としま未来文化財団、フェスティバル/トーキョー実行委員会、公益財団法人東京都歴史文化財団(東京芸術劇場・アーツカウンシル東京)〕
アジアシリーズ共催 国際交流基金アジアセンター
協 賛 アサヒグループホールディングス株式会社、株式会社資生堂
後 援 外務省、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会、J-WAVE 81.3 FM
特別協力 西武池袋本店、東武百貨店池袋店、東武鉄道株式会社、サンシャインシティ、ジュンク堂書店 池袋本店、株式会社ヒューマックスシネマ、理想科学工業株式会社、有限会社アップリンク
協 力 東京商工会議所豊島支部、豊島区商店街連合会、豊島区町会連合会、一般社団法人豊島区観光協会、一般社団法人豊島産業協会、公益社団法人豊島法人会、池袋西口商店街連合会、特定非営利活動法人ゼファー池袋まちづくり、ホテルメトロポリタン、ホテル グランドシティ、池袋ホテル会、サンシャインプリンスホテル、リソルホテル株式会社
宣伝協力 株式会社ポスターハリス・カンパニー、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
特設
WEBサイト
http://www.festival-tokyo.jp/

 

 

 

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