フェスティバル/トーキョー18 『NASSIM』(ナシーム) 観劇レポート

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10月13日(土)~11月18日(日)まで豊島区で開催されていたフェスティバル/トーキョー18。今年で11回目の開催となった、国際的舞台芸術フェスティバルです。
 
「フェスティバル/トーキョー18」全プログラム発表記者会見レポート
 
今回はそのプログラムのひとつ、ナシーム・スレイマンプール × ブッシュシアター『NASSIM』(ナシーム)を観劇してきました。


『NASSIM』(ナシーム)はイラン出身で、ドイツ・ベルリン在住の劇作家、ナシーム・スレイマンプール氏による作品です。
 
劇作家のナシーム・スレイマンプール氏(左)

劇作家のナシーム・スレイマンプール氏(左)


 
毎ステージ異なる俳優をキャスティングして上演されますが、俳優は一切作品の内容や自分の役割を知らないまま、リハーサルなしで本番を迎えます。
 
今までにこのスタイルで45か国以上の劇場で上演されてきた本作が、池袋のあうるすぽっとで11月9日~11月11日の3日間上演されました。
 
今回キャスティングされたのは
 
11月 9日 塙 宣之氏(ナイツ)
11月10日 丸尾丸一郎氏(劇団鹿殺し)
11月11日 ドミニク・チェン氏、 森山未來氏(追加公演)
 
の計4名。
 
筆者は10日の丸尾丸一郎氏の回を観劇しました。作品の内容はお伝え出来ないのですが、舞台に1人登った丸尾氏がスレイマンプール氏の指示に従って話し、行動し、時には観客も巻き込んでストーリーが展開していきます。
 
舞台が始まるまでは俳優の方はスレイマンプール氏とは一切の面識がないので、私たち観客の見守るなかで、舞台上で俳優と劇作家が交流を深めていく様子が見て取れます。
 
そして、舞台が進むにつれ、舞台上の俳優とスレイマンプール氏の間だけではなく、観客席のわたしたちを含めた3者間につながりが生まれていることに気が付きます。わたしたちは舞台をただ受動的に観劇するのではなく、次第に作品の進行に加担していくいう能動的な姿勢へと移行してゆくのです。
 
またとない経験ができた今回の『NASSIM』(ナシーム)でした。
 
ポストパフォーマンストークでは、スレイマンプール氏がどのように演劇に取り組んでいらっしゃるかが語られました。
 
司会の林英樹氏は、スレイマンプール氏の前作『白いウサギ、赤いウサギ』の2016年日本公演時の総合プロデューサーを務められました。『白いウサギ、赤いウサギ』は世界各国で翻訳・上演されています。
 
林氏が日本語版脚本をスレイマンプール氏に渡す瞬間。

林氏が『白いウサギ、赤いウサギ』の日本語版脚本をスレイマンプール氏に渡す瞬間。


 
スレイマンプール氏は、舞台上には「4つの壁」があるといいます。客席を向いて舞台に立つ俳優を囲む3方の物質的な壁と、もう1つは客席と舞台との間に立ちふさがる、心理的な見えない壁。しかし今回の『NASSIM』(ナシーム)では見事にその壁が取り払われ、俳優と観客、そして劇作家であるスレイマンプール氏が確かに一体となった瞬間があったと感じました。
 
フェスティバル/トーキョー18は終了しましたが、また来年どんな作品との出会いがあるか今から楽しみです。
 
また、2018年12月16日(日)にはフェスティバル/トーキョー18で初上映された山本卓卓(やまもと・すぐる)氏の映像作品『Changes(チェンジズ)』が渋谷アップリンクにて上映されます。
 
こちらはドキュメント映像ですが、今回上映されたままの形では終わらず、これから2年間をかけて変化し続けていくという実験的な作品です。アップリンクでは現時点での最新バージョンをアーティストトーク付きで上映予定です。
 
気になる方はぜひ足を運んでみてください。
 
詳細はフェスティバル/トーキョー18公式サイトでご確認ください。

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