脱ぎ捨て跨ぎ越せ、新しい人へ。国際舞台芸術祭「フェスティバル/トーキョー18」全プログラム発表記者会見レポート

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2009年2月の初開催以来、計270作品を上演し、合わせて61万人を超える観客を動員した国際舞台芸術祭「フェスティバルトーキョー(F/T)」
同時代の舞台作品の魅力を多角的に紹介し、舞台芸術の新たな可能性を追求するF/Tは、今年で開催11回目を迎えます。

期間は平成30年10月13日(土)から11月18日(日)までの37日間。
F/Tでしか出会えない国際共同プログラム、アジアのアーティストの新しい波に注目した作品など、本年も多彩で先鋭的なプログラムの数々が展開されます。

先日、としまセンタースクエアにて「フェスティバルトーキョー2018」全プログラム発表の記者会見が行われましたので、今回はその様子をお伝えいたします。

 

新しい人と『小さな社会』

今年のF/Tのテーマとして掲げられたのは、「脱ぎ捨て跨ぎ越せ、新しい人へ。」

2016年の「境界線から、新しい人へ」、2017年の「新しい人、広い場所へ」といった「新しい人」をテーマに据えて3回目の開催で、今回がその最終回となります。では、本年のテーマにはどういった思いが込められているのでしょうか。

 

F/T ディレクター 長島確氏

F/T ディレクター 長島確氏

「今、世界中のいろいろな場所で、これまで通用していた価値観が問い直されている、そういう時期に来ていると思います。かといって新しいスタンダードが見えているわけでもない。そういう混迷の中で、あっさりと(古いものを)脱ぎ捨てていくような『新しい人』がもうすでに現れてきているのではないでしょうか」

F/T18の基本コンセプトについて解説するのは、新たにF/Tのディレクターに就任した長島氏。長島氏は「『新しい人』は必ずしも世代や年齢の問題というわけではない」と語り、誰もが「新しい人」に向けてどのように変わっていくのか、それが問われている時期なのだと指摘します。

折しも、本イベントを牽引し続けてきた市村作知雄氏から二人の新・共同ディレクターへとバトンが受け渡され、新体制となったF/T。大転換を迎え、まさにフェスティバル・トーキョー自身も「新しい人」へと歩みを進めている最中なのかもしれません。

 

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また、長島氏は舞台芸術そのものの特性にも言及します。

「舞台芸術で面白いのは、集団創作であるという点です。創作のプロセスや上演にも多くの人間の立ち合いが必要なわけで、まさにテストケースとしての『小さな社会』と言えるのではないでしょうか。フェスティバルというのはそうした『小さな社会』の数々が期間限定で街の中に現れる、特別な時間なのだと考えています」

「新しい人へ」向かって、都市の中につかのま発生する「小さな社会」。それこそがこの世界を変える鍵であり、F/T18の本質ということなのでしょうか。

 

プログラム紹介

それでは、発表されたプログラムの一部の内容についてご紹介いたします。

 

■ボンプン・イン・トーキョー
キュレーション:ローモールピッチ・リシー
11/10(土)〜11/11(日)
北千住BUoY

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3日間で14万人を動員するカンボジア随一のフェスティバル「BonnPhum(Village festival)」。ポル・ポト政権時代を経て断絶の危機に瀕した伝統芸能を、平均年齢24歳というカンボジアの若いカルチャーに繋げようという試みで、エネルギッシュに活動する若手アーティストがジャンルの垣根を超えて集結するイベントです。

若い世代から圧倒的な指示を集める「ボンプン」ですが、本企画ではディレクターのローモールピッチ・リシー氏によるレクチャーや現地バンドによる演奏、伝統舞踏などを紹介。東京にいながら、カンボジアの伝統と「いま」を同時に体験できるイベントになっています。

 

■A Poet: We See a Rainbow
作・演出・出演:森栄喜
10月中旬〜下旬
豊島区内各所※会場、スケジュール等の詳細は決まり次第、F/T公式HPにて発表

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日本の同性婚問題をパフォーマンスを通じて訴えた『Wedding Politics』や家族をテーマにしたF/T17の『Family Regained :The Picnic』など、自身が体感する社会問題を作品を通じて語りかけたきた写真家・森栄喜氏。2度目のF/Tへの参加となる今回は、写真でも映像でもなく、「詩」の朗読を通じてLGBTをはじめとする多様性のあり方を聴衆に問いかけます。

タイトルは『We See a Rainbow』。「僕だけの虹でもなく、あなただけの虹でもない。まさに『We』、私たちの虹を見る、立ち上がらせるようなパフォーマンスにしたい」と語る森氏。本作は昨年に引き続き、「まちなかパフォーマンスシリーズ」として上演されます。公園や路地の一角で、私たちはどのような「虹」を目撃するのでしょうか。

 

■ラジオ太平洋
作・演出・出演:福田毅
10/27(土)-28(日)、11/10(土)-11(日)
東京さくらトラム(都電荒川線内)

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F/Tのまちなかパフォーマンスシリーズには3年連続の登場となる福田毅氏。今回は東京さくらトラム(都電荒川線)を貸切り、ラジオのパーソナリティーに扮した福田氏が公開生放送形式の演劇作品をお届けします。

「何度か東京さくらトラムには乗車しているのですが、電車の中のノイズを通して聞こえてくる外の音がものすごくいいんですね。これをぜひ体験していただきたいと思って、ラジオという仕掛けをひとつ噛ませれば耳が開くのではないかと思いました」と語る福田氏。早稲田から三ノ輪橋までの約60分、移り変わる車窓からの眺めと音に福田氏のナビゲートが加わったスペシャルな時間が提供されます。

 

■テラ(仮)
坂田ゆかり(演出)×稲継美保(出演)×田中教順(音楽)
原案:三好十郎『水仙と木魚』ほか
11月中旬
東京都内某所※会場、スケジュール等の詳細は決まり次第、F/T公式HPにて発表

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1980年代生まれの坂田ゆかり(演出)、稲継美保(出演)、田中教順(音楽)によるコラボレーション企画。旧知の仲で共に東京芸術大学音楽環境創造科出身の3人が作り上げる、言葉と音楽のまちなかパフォーマンスです。冷戦時代に書かれた三好十郎の戯曲『水仙と木魚』をベースに、童話や神話、リサーチを通じて得られた地域の歴史や人々の記憶を取り込みつつ、現代の諸問題を見つめる作品となっています。

また、『水仙と木魚』は寺が舞台のお話です。演出を手がける坂田氏は「お寺を舞台にすることで、宗教の場所であるこの場所を、もう一度パブリックなスペースとして捉え直したい」と語りますが、まだ会場は未定とのこと。果たして現代にどのような『水仙と木魚』が蘇るのか、期待が高まります。


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人と都市から始まる舞台芸術祭、フェスティバル/トーキョーは2018年10月13日(土)から11月18日(日)まで開催。
アジア各国の舞台芸術、音楽、美術などを紹介する「アジアシリーズ」、まちなかのさまざまな場所で演目を実施する「まちなかパフォーマンスシリーズ」、市民参加型の「参加する」「学ぶ」プログラムなど、本年も多彩なプログラムが展開されます。

私たちが向かう先はまだ見えない。それでも耳を澄ますと、街のあちこちからワクワクするような音が聞こえてきます。思い切ってその先に足を踏み出した時、すでにあなたは「新しい人」なのかもしれません。

ぜひ、F/T18でお気に入りの作品を見つけてみてくださいね!

 

開催概要

名 称 フェスティバル/トーキョー18
会 期 平成30(2018)年10月3日(土)~ 11月18日(日)
会 場 東京芸術劇場
あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
南池袋公園 ほか
プログラム数 主催プログラム16演目・連携プログラム15演目
主 催 フェスティバル/トーキョー実行委員会
豊島区/公共財団法人としま未来文化財団/NPO法人アートネットワーク・ジャパン、アーツカウンシル東京・東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
アジアシリーズ共催 国際交流基金アジアセンター
協 賛 アサヒグループホールディングス株式会社、株式会社資生堂
後 援 公益社団法人日本芸能実演家団体協議会、J-WAVE 81.3 FM
特別協力 西武池袋本店、東武百貨店池袋店、東武鉄道株式会社、株式会社サンシャインシティ、東京都交通局
協 力 東京商工会議所豊島支部、豊島区商店街連合会、豊島区町会連合会、一般社団法人豊島区観光協会、一般社団法人豊島産業協会、公益社団法人豊島法人会、池袋西口商店街連合会、特定非営利活動法人ゼファー池袋まちづくり、池袋西口公園活用協議会、南池袋公園をよくする会、ホテルメトロポリタン、ホテル グランドシティ、池袋ホテル会
宣伝協力 株式会社ポスターハリス・カンパニー、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館、有限会社アップリンク
特設
WEBサイト
http://www.festival-tokyo.jp/

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